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2024.12.03

再生可能エネルギー発電促進賦課金とは

再生可能エネルギー発電促進賦課金とは

昨今の電気代高騰を受け、毎月の電気料金に上乗せされている再エネ賦課金について注目する企業が増えています。電気を使用するすべての企業が再エネ賦課金を負担しなければならず、しかもその負担額は化石燃料を巡る国際情勢や国内の再生可能エネルギーの普及状況によって、大きく変動するからです。
今回は、再エネ賦課金とは何か。概要や仕組み、さらに負担を抑える方法まで解説します。自社の電気代を削減したいという方はぜひ参考にしてください。

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再生可能エネルギー発電促進賦課金とは

そもそも賦課(ふか)とは、「税金などを割り当てて負担させ、徴収する」という行為を指します。

つまり再エネ賦課金とは、太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギー(再エネ)の普及・拡大を促進するために、電力会社が電気料金に上乗せする形で消費者から徴収しているお金のことです。
正式名称は「再生可能エネルギー発電促進賦課金」といいます。

脱炭素社会の実現ならびに化石燃料からの脱却を目指し、世界中が再エネの導入拡大に向けて大規模な投資を進めています。

日本は再エネの普及促進に向け、2012年から「固定価格買取制度(FIT)」を開始し、再エネで発電した電気を電力会社が一定の価格(固定価格)で、一定期間にわたって買い取ることを国が義務化しています。
当時の再エネの発電コストは、火力発電など従来の電源と比べて高く、導入は限定的でした。そこで政府はFIT制度によって再エネの普及拡大を図りました。

ただし、FIT制度のもとで発電した再エネ電力を買い取るには、相応の負担が発生します。その費用を電力会社がすべて負担していては、公平性に欠けるうえ、電力会社の財務基盤を毀損しかねません。また制度の持続性も損なわれます。何より再エネで発電された電力は、日々使う電気の一部として供給されています。

そこで買い取りにかかった費用は電気を使うすべての利用者から「賦課金」として集めることが規定されたのです。

つまり日本の再エネ導入は、日本国民・企業全体が支えているというわけです。

再生可能エネルギー発電促進賦課金の仕組み

次に再エネ賦課金の仕組みについて解説します。

太陽光発電などを設置した再エネ発電事業者は再エネで発電した電力を、一般送配電網を通じて電力会社に売ります。
電力会社はその電力をFIT制度で規定された価格で買い取ります。2024年度の買取価格は、50kW以上の太陽光発電(入札対象外)の場合だと1kWhあたり9.2円です。
この買い取りの際にかかった費用に充当されるのが「再エネ賦課金」というわけです。

電力会社が買い取った再エネ電力は一般送配電網を介して、日々使用する電気の一部として、企業や一般家庭に供給されています。
再生可能エネルギー発電促進賦課金の仕組み
再エネがもたらすメリットは、上記のような電気としての価値に加えて多岐にわたります。
温室効果ガス排出量の削減 資源の乏しい日本にとって、エネルギー自給率の向上につながる 化石燃料依存度の低下 原油やLNG(液化天然ガス)など、燃料価格の乱高下に伴う電気料金の上昇リスクを抑制
こうしたメリットは、電気を使用するすべての消費者が享受できるものです。
そのため、薄く広く負担を分かち合うという観点から、すべての電気利用者が再エネ賦課金を負担すると規定されたのでした。

発電促進賦課金の徴収方法

それでは再エネ賦課金はどのように徴収されるのでしょうか。

賦課金の負担額は、公正性を期すため、毎月の電気使用量に比例すると定められており、使用量が多い人ほど負担額が増える仕組みとなっています。

つまり、電気利用者は毎月、電気料金とともに、「1ヶ月あたりの電気使用量×再エネ賦課金単価」の合計金額を電力会社に支払っています。
1ヶ月あたりの電気使用量×再エネ賦課金単価

再エネ賦課金の特徴をまとめると下記となります。
企業、個人問わず、電気を使うすべての人が負担する 電気料金の一部として徴収される 負担額は電気の使用量に比例する 賦課金の単価は全国一律
なお賦課金の単価は再エネ導入量などを踏まえて、毎年度、経済産業大臣が定めると規定されています。

再生可能エネルギー発電促進賦課金の使途

徴収された再エネ賦課金は何に使われているのでしょうか。

お金の流れを見ると、企業を含むすべての電気利用者から「再エネ賦課金」として徴収されたお金は、電力会社が、国が指定する機関に対して「納付金」として納めます。
この「納付金」を財源として、電力会社が再エネ発電事業者に支払った買い取り費用をまかなうため、指定機関から電力会社へ「交付金」という形で支給されます。なお、交付金は電力会社の収益として整理されますが、再エネを買い取った費用と相殺されるため、収支への影響はありません。

つまり、徴収された再エネ賦課金は、電力会社が再エネ電力を買い取るための費用に回され、最終的には再エネ発電事業者に届く仕組みになっています。

再生可能エネルギー発電促進賦課金の対象となる電気料金

FIT制度などを定める再エネ特措法(再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法)では、再エネ賦課金の対象を電気料金の契約を締結しているすべての法人および個人と規定しています。そのため、大手電力会社や新電力との契約に関わらず、電気を使用するすべての法人、個人が再エネ賦課金の対象となります。

ただし、賦課金にも対象外があります。
それが太陽光発電などの再エネでつくった電気を自家消費する、自家発電・自家消費モデルです。
具体的には「オンサイトPPA」と「自己託送」の2つがあります。

オンサイトPPAとは
PPAとはPower Purchase Agreementの略で、サービス事業者(PPA事業者)が太陽光発電を設置し、企業(電力の需要家)と直接、売電契約を結ぶスキームです。太陽光発電を工場や倉庫の屋根など、需要家の敷地内(オンサイト)に設置するモデルをオンサイトPPAと呼びます。

オンサイトPPAはPPA事業者が発電設備を設置するため、需要家は導入費用やメンテナンス費用を負担する必要がなく、さらにこの発電設備から購入した電気は賦課金の対象外となります。

一方、発電設備を敷地外(オフサイト)に設置するオフサイトPPAは、オンサイトPPAと同様、再エネでつくった電気を使うスキームですが、小売電気事業者を介して購入する必要があるため、再エネ賦課金の対象となります。

自己託送とは
自己託送とは、遠隔地にある「自社の発電所」でつくった電力を、送配電網を利用して別の場所にある「自社の需要地」に送電するモデルです。

オンサイトPPAと異なり、自己託送は自社で発電所を導入するため、導入費用やメンテナンス費用は需要家が負担する必要があります。しかし、その一方でオンサイトPPAよりも多くの電気料金やCO2を削減できるという特徴を持っています。

もちろん、自己託送も再エネ賦課金の対象外です。

ただし、経済産業省 資源エネルギー庁は2023年12月26日、自己託送制度の要件の厳格化を表明し(再エネ導入の拡大に向けた今後の自己託送制度の在り方について:https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/pdf/068_03_00.pdf​​)、2024年2月に改正しています。

厳格化された自己託送の要件は下記のとおりです。
1. 発電設備の所有に係る要件
他者が開発・設置した発電設備の譲渡または貸与などを受けて、名義上の管理責任者となる場合は、自己託送の対象としない
2. 電気の最終消費者に係る要件
電気の消費先で他者に供給(融通)する場合、会社法が規定する親会社と子会社の関係など、他者との間に密接な関係がなければ、自己託送の対象としない

自己託送の活用を検討している方は、要件が厳格化されているため注意が必要です。 賦課金の対象外について

再生可能エネルギー発電促進賦課金の料金額

再エネ賦課金の単価は、「①買い取り費用−②回避可能費用+指定機関の事務費÷③販売電力量」から算定されます。

① 買い取り費用
電力会社がFIT制度などにもとづき、再エネを買い取る際にかかった費用
2024年度想定:4兆8,172億円
② 回避可能費用
電力会社が買い取った再エネを卸電力市場に売却して得た収入
2024年度想定:2兆1,322億円
③ 販売電力量
過去の年間販売電力量の実績および指定機関による年間の需要予測をもとに推計
2024年度想定7,707億kWh

このほか、指定機関の事務費用として、2024年度は10億円が計上されています。
しかし、賦課金単価を左右する要素は、あくまで「買い取り費用」「回避可能費用」「販売電力量」の3つであり、この3要素をもとに毎年度、算定されています。

2024年度の賦課金単価は1kWあたり3.49円と前年度に比べ2.09円もの上昇となりました。適用期間は2024年5月から2025年4月までです。

再生可能エネルギー発電促進賦課金の料金額の変遷

再エネの導入が進めば進むほど、再エネによって発電された電力の買い取り量も増えます。買い取り量が増えれば、当然、賦課金の単価も上昇します。
実際、賦課金の単価は毎年、増えており、2012年度から2024年度までの単価は次のように推移しています。

2012年度 0.22円/kWh
2013年度 0.35円/kWh
2014年度 0.75円/kWh
2015年度 1.58円/kWh
2016年度 2.25円/kWh
2017年度 2.64円/kWh
2018年度 2.90円/kWh
2019年度 2.95円/kWh
2020年度 2.98円/kWh
2021年度 3.36円/kWh
2022年度 3.45円/kWh
2023年度 1.40円/kWh
2024年度 3.49円/kWh

再生可能エネルギー発電促進賦課金単価の推移
出典:東京電力「再生可能エネルギー発電促進賦課金単価 https://www.tepco.co.jp/corporateinfo/illustrated/charge/1253678_6290.html
資源エネルギー庁「再生可能エネルギーのFIT制度・FIP制度における2024年度以降の買取価格等と2024年度の賦課金単価を設定します https://www.meti.go.jp/press/2023/03/20240319003/20240319003.html


2022年度まで上昇し続けていた賦課金ですが、2023年度、一転して1.4円まで低下します。賦課金の減額は、FIT制度が始まって以来、初めてでした。

大幅な低下の理由は、ロシアによるウクライナ侵攻を機に起こったエネルギー価格の高騰が大きく関係しています。原油やLNG、石炭など化石燃料の国際市況が急騰し、日本の電力市場価格も急激に上昇しました。それに比例し、太陽光発電や風力発電などで発電した電力の価値も上がり、より高い価格で市場に売却できるようになった結果、2023年度の回避可能費用が3兆6,353億円まで増加したのです。そのため、賦課金単価が大幅に低下したのでした。

ただし、エネルギーを巡る国際市況はピークアウトを迎えており、日本の電力市場価格も落ち着きを取り戻しています。その結果、2024年度の賦課金単価は2年ぶりに上昇しました。

賦課金単価と電力市場価格の間には次のような相関性があります。
電力市場価格が上がると、賦課金単価は下がる 電力市場価格が下がると、賦課金単価は上がる

再生可能エネルギー発電促進賦課金の今後の展望

国は2030年度の温室効果ガス46%削減の実現に向け、再エネの割合を36〜38%まで増やす計画です。
2022年度の再エネ比率は21.7%であるため、残り7年の間に14〜16ポイント積み増す必要があり、再エネ賦課金も上昇する見通しです。

しかし、ウクライナ侵攻や中東情勢の緊迫化に、円安も加わり、今後もエネルギー価格が大きく変動する可能性があります。一般財団法人電力中央研究所が「回避可能費用が1円上がると、賦課金単価は0.2円下がる」(2030年における再生可能エネルギー導入量と買取総額の推計:https://criepi.denken.or.jp/jp/serc/research/files/42/pdf/Y19514.pdf)と分析するように、賦課金は国際情勢によっても大きく左右されるため、将来予測は難しい面があります。

ただし、2012年度に始まった買い取りが順次終了を迎える2032年以降、賦課金は低下するとの予測があります。2013年時点での分析ですが、環境省では、賦課金単価は2030年にピークアウトし、2031年以降、低下すると予想しています(再生可能エネルギーの導入に伴う効果・影響分析:https://www.env.go.jp/earth/report/h26-01/chpt05.pdf)。 環境省 [環境省, 2013]の分析結果(2020 年までの導入量に対する賦課金単価)

まとめ

太陽光発電など再エネの普及のために電気料金に上乗せする形で徴収されているのが、再エネ賦課金です。
賦課金の対象は電気を利用する法人および個人であり、電気の使用量に応じて負担額が増える仕組みになっています。

日本がカーボンニュートラルを実現するためには、再エネのさらなる拡大が不可欠です。その一方で、賦課金は2030年度までは上昇する見込みで、企業にとってコスト負担の増加が避けられない情勢です。

しかしながら、賦課金の負担額を減らすことはできます。

オンサイトPPAや自己託送を通じて太陽光発電を導入し、自家発電した電気を使えば、電力会社から購入する電気を削減することができます。購入電力が減少すると、再エネ賦課金の負担割合も削減できます。

今なお、中東情勢の緊迫化や円安などを要因とした化石燃料価格の高騰から、電気料金の値上げは続いています。

オンサイトPPAや自己託送のスキームであれば、再エネ賦課金の負担軽減だけでなく、電気料金の上昇リスクの抑制に加え、電気料金の削減まで見込めます。
さらに温室効果ガス排出量の削減にも貢献できることから、企業価値の向上にもつながります。


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