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2024.12.03

CDPとは?評価内容から企業の気候変動対策取り組み事例まで解説

再生可能エネルギー発電促進賦課金とは

CDPとは企業や自治体の気候変動対策や環境への取り組みを評価する国際NGOであり、ESG投資において重要な役割を果たしています。

2023年度は全世界で時価総額の3分の2を超える約23000社が、CDPの要請を受け、環境課題に関する情報を開示しました。

本記事では企業の環境戦略に有益なCDPについて、概要から情報開示の内容まで詳しくご紹介します。さらに企業にとってのメリットについても解説しますので、ぜひご一読ください。

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CDPとは

CDPとは、環境課題に関するグローバルな情報開示システムを運営し、企業や自治体への課題解決への働きかけを行っている国際NGOです。2000年にイギリスで設立されました。

CDPは正式には「Carbon Disclosure Project(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)」と言います。

当初は正式名称が表す通り、気候変動対策におけるGHG(温室効果ガス)削減を推進する組織でした。しかし人間の経済活動による環境課題は気候変動だけに留まりません。そのためCDPは、環境評価を水資源や森林保護の領域にまで拡大しました。

現在は略称の「CDP」を正式名称とし、企業や都市に対してGHG削減をはじめとした環境課題に関する質問書を送り、情報開示を実施しています。CDPの評価はESG投資を行う機関投資家や、大手企業が環境情報を得るために非常に重要視されています。

日本では「CDPジャパン」として2005年に活動が開始されました。
CDP
出典:CDP「CDPについて」

CDPの目的はネットゼロとネイチャーポジティブ

CDPの最大の目的は、ネットゼロ(気候変動対策)とネイチャーポジティブ(水資源と森林保護)というグローバルな目標を達成することです。

情報開示は目標への進捗状況を確認し、あらゆるステークホルダーとのコミュニケーションの基盤となります。CDPは情報開示後のアクションについても、正当に評価される枠組みを構築しています。

そのため企業や自治体が環境課題に対して最適なエンゲージメントを取り、持続可能な社会構築につなげることが可能です。

CDPが取り組む三つの領域

CDPが情報開示として取り組んでいるのは次の3つの領域です。それぞれを具体的に解説していきます。

1. 気候変動
2. 水資源
3. 森林保護

気候変動

2023年は過去最も気温が高い年となり、国連のアントニオ・グテーレス事務総長は「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰化の時代が到来したのです」と発言しました。パリ協定による「1.5℃基準」を推進するためには、気候変動に対するアクションを加速していく必要があります。

CDPが2003年に開始した気候変動に対する質問書の情報開示は今後ますます重要となっていくでしょう。CDPの気候変動に対する質問書のテーマは以下のようになります。
気候変動に対してのリスク管理 気候変動に対するリスクと機会 GHG排出量と目標値をどのようにカバーするか 石油・ガス、電気事業、自動車、食料・飲料・タバコ、金融サービスなどのセクター別に関しての設問 サプライチェーンプログラムが追加されているか

水資源

大量に水を使用する、または水資源そのものに影響を与える可能性がある企業に対して、それらのリスクや管理、機会についての質問が2009年より開始されました。

これまでは水資源に関して気候変動のような世界共通の定量目標は存在しませんでした。しかし2022年に生物多様性に関するグローバル目標「昆明・モントリオール生物多様性枠組2」が採択され、水資源に関連するターゲットが明記されたのです。

そのため2023年、CDPの水資源の質問項目においても有害物への設問や、プラスチックに関するモジュール追加等、世界の動向を反映した追加が行われています。今後事業活動に水資源を使用する企業は注視していく必要があるでしょう。

現在の水資源に関するCDPの質問書は水を大量に消費するセクターの企業を対象に以下のようなテーマになります。
水資源に対するリスク評価や機会 企業のガバナンス・戦略・コンプライアンス等 水資源に対する目標や取り組み

森林保護

CDPは2011年から森林保護に関する質問書を開始しました。気候変動において森林の保護は非常に重要です。パリ協定のシナリオ「1.5℃基準」を達成するためには森林によるCO2吸収・除去が欠かせません。

しかし森林破壊によるCO2排出量は年間5Gtにもなると言われています。また世界の都市の90%は、森林が重要な役割を果たしている集水域に依存しています。気候変動抑止や生物多様性の保存のためにもこれ以上の森林破壊は食い止めねばなりません。

森林保護に関するCDPの質問テーマは次のようになります。
森林へのリスクの高い4つの分野、木材・畜産品(牛)・パーム油・大豆に注目した内容 森林減少へのリスクやビジネス機会 森林減少に対する方針と目標について サプライチェーンへの関与 トレーサビリティと認証等 質問書のテーマ 出典:CDPキャピタルマーケッツ 紹介資料「質問書のテーマ」8p

CDPの環境評価内容

ここではCDPの環境評価の具体的な仕組みと種類を解説していきます。

企業に対する具体的な質問項目

CDPが取り組む3領域における主な質問項目をまとめました。

環境領域 質問内容の概要
気候変動 ガバナンス リスクと機会
事業戦略
目標と実績
排出量算定方法
排出量データ
エネルギー
追加指標
検証
カーボン プライシング
協働
生物多様性等
水資源 企業の水会計指標
バリューチェーンとのエンゲージメント活動
事業への影響
リスク評価手続き
リスク、機会、およびそれへの対応
施設の水会計指標
水関連ガバナンスと事業戦略
目標
検証
プラスチック等
森林保護 森林リスク・コモディティへの依存度
土地管理
データ収集
リスク評価
リスクと機会
ガバナンス
戦略計画
トレーサビリティシステム認証
ブラジル森林法
直接サプライヤーとのエンゲージメント
イニシアチブ/活動
障壁と課題
最終承認
サプライチェーンのイントロダクション
販売認証量
協働の機会
排出量削減等

出典:CDP2023気候変動質問書導入編「CDP気候変動質問書の概要」
出典:2023年CDP水セキュリティ質問書導入編「CDP水セキュリティ質問書:構成」
出典:CDP2023フォレスト質問書導入編「CDPフォレスト質問書の概要」

CDPスコア

CDPの評価は4段階のレベルを示すスコアで開示されます。スコアの内容は次の通りです。

レベル 内容 スコア
リーダーシップレベル 環境マネジメントにおける最適な活動を行っているかどうかを評価 A
A-
マネジメントレベル 環境課題への活動や方針、戦略をどれくらい策定し実行しているかを評価 B
B-
認識レベル 事業にかかわる環境問題・リスク・影響をどれほど認識しているかを評価 C
C-
情報開示レベル 企業の情報開示の度合いを評価 D
D-
CDPのスコアリング実施のための十分な情報を提供していない F

出典:CDP 気候変動レポート 2023: 日本版「CDPスコアリング」10p

CDPを通じた企業戦略のメリット

ここまではCDPの概要や質問内容、評価について解説してきました。地球上の環境課題に対して、CDPによる情報開示がいかに有効かご理解いただけたのではないでしょうか。

ここからはCDPを通じた企業の環境戦略を実施する上でのメリットをご紹介します。

企業の透明性向上とリスク管理

CDP参加により企業は自社の環境活動を透明性の高い情報としてステークホルダーにアピールすることが可能です。またCDPの質問内容は具体的で多岐に渡るため、サプライチェーンでの取り組みや設備コストの見直し等、自社のリスク管理にも繋げることができます。

また環境課題を解決しながら企業の利益へと結びつけることが可能なため、長期的に見て企業のメリットは大きいと言えるでしょう。

グローバル企業との協力

CDPの質問内容にはサプライチェーンプログラムに関するものやバリューチェーンに関するものも含まれています。サプライチェーンがグローバルに展開される時代、グローバル企業やステークホルダーとの連携を強化することが非常に重要です。
そのためには大手企業のみならず中小企業との連携も欠かせない時代となるでしょう。今後はグローバルに広がる企業と先行した取り組みを実施することが環境活動には必須です。

CDPの課題

CDPにも課題がないわけではありません。CDPに参加するには、質問に対する回答事務費用を支払うコストがかかります。また質問内容に対する専門的で定量的な回答を行うことは企業単体で行うことはたいへん困難です。特に気候変動におけるCO2排出量の算定は複雑で専門的な知識が必要です。

そのため、企業はCDP参加に向けて脱炭素支援を行っている専門サービスを利用することもひとつの方法でしょう。

CDPと日本企業の関わり

国内では2020年に政府が「2050年カーボンニュートラル宣言」を世界に向けて発信したことで、脱炭素への機運が大きく高まりました。

さらに日本は2022年にGX(グリーントランスフォーメーション)への取り組みを表明しています。GXとはCO2を排出しないクリーンエネルギーへの転換や、環境に配慮した製品やサービス開発のためのイノベーション促進を掲げる政策です。

環境配慮や脱炭素への取り組みは国内でも企業を評価するための大きな指標となる時代を迎えており、CDPでの情報開示は今後ますます重要になってくると言えるでしょう。

CDP参加の日本企業の概況

2023年度CDPに参加している日本企業は1,900社を超えており、3領域において155社の企業がA認定を受けました。A認定を受けた企業リストをご紹介します。

花王株式会社・積水ハウス株式会社・イオン株式会社・株式会社アイシン味の素株式会社・ANAホールディングス 株式会社・アサヒグループホールディングス株式会社・アスクル株式会社・アステラス製薬株式会社・アズビル株式会社・株式会社ベネッセホールディングス・株式会社ブリヂストン・キヤノン株式会社・中外製薬株式会社・コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングス株式会社株式会社コンコルディア・フィナンシャルグループ・大日本印刷株式会社・第一三共株式会社・株式会社ダイセキ・大東建託株式会社・大和ハウス工業株式会社・大和ハウスリート投資法人・株式会社デンソー・EIZO株式会社・ファナック株式会社・株式会社ファーストリテイリング・株式会社エフピコ・富士電機株式会社・富士フイルムホールディングス株式会社・株式会社フジタ・富士通株式会社・芙蓉総合リース株式会社・株式会社博報堂DYホールディングス・株式会社日立ハイテク株式会社・日立製作所・本田技研工業株式会社・いちご株式会社・産業ファンド投資法人・株式会社三越伊勢丹ホールディングス・J.フロント リテイリング株式会社・日本プライムリアルティ投資法人・日本たばこ産業株式会社・上新電機株式会社・株式会社ジェイテクト・カゴメ株式会社・鹿島建設株式会社・川崎重工業株式会社・川崎汽船株式会社・KDDI株式会社・キッコーマン株式会社・キリンホールディングス株式会社・株式会社 小松製作所・株式会社コーセー・株式会社クボタ・株式会社熊谷組・京セラ株式会社・九州電力株式会社・ライオン株式会社・株式会社LIXIL・丸紅株式会社・株式会社丸井・明治ホールディングス株式会社・明治安田生命保険相互会社・ミネベアミツミ株式会社・三菱電機株式会社・三菱地所株式会社・三菱地所物流リート投資法人・三井不動産株式会社・株式会社商船三井・森ビル株式会社・株式会社村田製作所・ナブテスコ株式会社・長瀬産業株式会社・日本電気株式会社・株式会社ニコン・日本電信電話株式会社・日本郵船株式会社・日産自動車株式会社・日本特殊陶業株式会社・株式会社野村総合研究所・株式会社NTTデータ・株式会社大林組・王子ホールディングス株式会社・株式会社オカムラ・小野薬品工業株式会社・大塚ホールディングス株式会社・パナソニックホールディングス株式会社・株式会社ポーラ・オルビスホールディングス・太陽誘電株式会社・株式会社リクルートホールディングス・株式会社リコー・ローム株式会社・三機工業株式会社・サッポロホールディングス株式会社・セコム株式会社・セイコーエプソン株式会社・積水化学工業株式会社・SGホールディングス株式会社・新日本空調株式会社・塩野義製薬株式会社・株式会社資生堂・SOMPOホールディングス株式会社・ソニーグループ株式会社・住友林業株式会社・サントリーホールディングス株式会社・太平洋セメント株式会社・大成建設株式会社・武田薬品工業株式会社・TDK株式会社・鉄建建設株式会社・株式会社八十二銀行・日清オイリオグループ株式会社・横浜ゴム株式会社・戸田建設株式会社・東邦ガス株式会社・東京海上ホールディングス株式会社・東京製鐵株式会社・東急不動産ホールディングス株式会社・TOPPANホールディングス株式会社・TOTO株式会社・トヨタ紡織株式会社・豊田通商株式会社・ユニ・チャーム株式会社・ヤマハ株式会社・ヤマハ発動機株式会社・YKK株式会社・横河電機株式会社

出典:CDP「CDP 2023 企業の情報開示」

日本企業によるCDP報告のメリット

日本企業がCDP報告を行うことのメリットを、次の2つの視点から解説していきます。

グローバルな認知とESG投資の可能性が向上 サステナビリティ戦略とリスク管理の改善

グローバルな認知とESG投資の可能性が向上

CDPはESG投資におけるグローバルスタンダードです。そのため世界中の機関投資家・購買企業・イニシアチブの環境情報開示要請に同時に応えることができるという大きなメリットがあります。これらは企業のブランディングを世界的に高め、消費者へのアピールに繋がり信頼感やESG投資の機会を向上させます。

また、CDPの質問内容はTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に準拠しているため、よりグローバルに認知が可能です。TCFDは上場企業等が気候関連のリスクと機会をより効果的に開示できるようにするためのフレームワークを提供している国際機関です。

出典:CDP「CDP スコアの説明」
参照:TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)

サステナビリティ戦略とリスク管理の改善

SDGs目標に代表されるサステナビリティはいまや企業の経営戦略にも欠かせない要素です。サステナビリティ戦略の最大の目的は、企業による持続可能な社会構築への貢献です。CDPの情報開示により、企業はネットゼロとネイチャーポジティブに向けたサステナビリティ戦略の構築が促進可能です。

さらに事業活動をサプライチェーンから見直すことが必要となるため、それぞれのシーンでのリスク管理の改善に繋げることができます。

CDP報告におけるベストプラクティス

日本では多くの企業がCDPを有効活用し、国際的な環境評価を高めています。公開されているAリスト認定企業のベストプラクティスを大いに活用し自社の取り組みの参考にしましょう。

成功事例の紹介

ここでは実際にCDP報告を実施した日本企業の事例を紹介していきます。

キヤノン株式会社

キヤノンは気候変動分野において「Aリスト」認定を3回取得しています。また2030年に2022年比で、サプライチェーンのスコープ1、2の排出量を42%、スコープ3での排出量を25%削減することを掲げています。「気候変動」「資源循環」「化学物質」「生物多様性」の4つの重点領域におけるさまざまな環境保全活動を推進しています。
参照:キヤノンニュースリリース「CDPから気候変動分野で最高評価となる「Aリスト」を獲得」

セイコーエプソン株式会社

キセイコーエプソンは、2008年に2050年をゴールとした「環境ビジョン2050」を策定し、その実現に向け環境活動を展開しています。

「サプライチェーンにおける環境負荷低減」「イノベーション促進による循環型経済の牽引と産業構造の革新」「国際的な環境保全」これら3つのアクションを掲げ、サステナビリティ経営を推進し、2022年CDPのAリスト認定を受けました。
参照:セイコーエプソン株式会社

まとめ:CDPに参加し国際的な環境価値を高めよう!

国際的な環境評価を行う機関CDPについてあらゆる角度から重要性を解説しました。ブランディングを高め投資家から投融資を受けるためには、CDPのような国際機関の環境評価を受けることが企業には必須となる時代を迎えています。

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