コラム
Column
2025.06.06
非化石証書とは?仕組みと種類、環境価値やメリットまで解説
非化石証書は、再生可能エネルギーをはじめとするCO2を排出しない非化石電源から発電された電力の「環境価値」を証書化したものです。
今回は「非化石証書」の仕組みや種類、グリーン電力証書・J-クレジットとの違いから購入方法まで解説します。ぜひ参考にしてください。
目次
- 非化石証書とは?仕組みと3つの種類
- 非化石証書の仕組み
- 非化石証書の種類は3つ
- 1.FIT非化石証書
- 2.非FIT非化石証書(再エネ指定あり)
- 3.非FIT非化石証書(再エネ指定なし)
- 非化石証書と他のグリーン認証との比較
- グリーン電力証書
- J-クレジット
- 非化石証書との特徴や供給量の比較
- 非化石証書のメリットと企業における活用方法
- 企業が非化石証書を購入する2つのメリット
- 企業価値の向上
- ESG投資に反映
- 環境に対する取り組みのアピールと報告書への活用
- 非化石価値取引市場の仕組み(購入プロセスとトラッキング)
- 非化石価値取引市場とは
- 非化石証書の3つの購入方法
- 1.再エネ価値取引市場で購入する
- 2.高度化法義務達成市場で購入する
- 3.相対取引で購入する
- 需要家による購入方法
- 1.需要家自身が購入する
- 2.代理購入事業者を通じて購入する
- 非化石証書の購入タイミング
- 非化石証書のトラッキングと透明性
- トラッキング付FIT非化石証書とは
- 非化石証書が持つ持続可能なエネルギーへの効果と影響
- 非化石証書の持続可能性と経済的利点
- 再生可能エネルギーへのポジティブな効果と国民負担の軽減
- 非化石証書の動向と課題
- 再生可能エネルギー源への移行を促進する政策
- 取引と市場での課題と問題点
- FPSの非化石証書関連サービス
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非化石証書とは?仕組みと3つの種類
ここでは非化石証書の仕組みと種類について解説します。
非化石証書の仕組み
非化石証書とは「非化石エネルギーの環境価値」の部分を証書化したものです。非化石エネルギーとは、温室効果ガスを排出しない非化石電源から発電された電力のことを指します。火力発電から発電された電気の価値は、物理的な電気の価値のみです。一方、太陽光や風力、水力、原子力など、温室効果ガスを排出しない非化石電源の場合、物理的な電気の価値と環境価値の両方を持ちます。これらを分離し、環境価値のみを取引できるようにするため、導入された仕組みの一つが、非化石証書です。この証書を購入することで、企業イメージの向上、温対法における排出量削減などに活用できます。
非化石証書の種類は3つ
非化石証書には次の3つの種類があります。
- FIT非化石証書
固定価格買取制度(以下FIT)に基づく再生可能エネルギー発電から供給される電力に対する証書です。(太陽光、風力、小水力、バイオマス、地熱など)JEPX非化石価値取引市場における最低価格 は0.4円/kWh、最高価格は 4.0円/kWhと定められています。
- 非FIT非化石証書(再エネ指定あり)
FIT対象外の再生可能エネルギー発電から供給される電力に対する証書です。(大型水力など)JEPX非化石価値取引市場における最低価格は0.6円/kWh、最高価格 は1.3円/kWhと定められています。
- 非FIT非化石証書(再エネ指定なし)
FIT対象外かつ再生可能エネルギー発電以外の電源から供給される電力に対する証書です。(原子力発電など)JEPX非化石価値取引市場における最低価格は0.6円/kWh、最高価格 は1.3円/kWhと定められています。
非化石証書と他のグリーン認証との比較
環境価値を取引する仕組みには、他にも「グリーン電力証書」と「Jクレジット」があります。非化石証書とどのような違いがあるのか比較してみましょう。
グリーン電力証書
グリーン電力証書とは、グリーン(自然)エネルギーにより発電された電気のもつ環境価値を、証書化し公表する仕組みです。物理的な電気の価値から切り離したCO2排出量削減効果や化石燃料の低減(省エネ)等の環境付加価値を証書化します。この付加価値は、発電事業者が保有するものですが、日本品質保証機構の認証に基づき、発行された証書を購入することができます。再生可能エネルギー発電設備を持たない企業・自治体でも、グリーン電力証書の購入・取得により、排出量削減といった環境対策に貢献できます。また、グリーン電力の利用を示すグリーン・エネルギー・マークなどが交付され、製品やサービスにマークを活用することができます。
出典:一般財団法人 日本品質保証機構
グリーン電力証書は、CDPやSBT(Science Based Targets)、RE100(Renewable Energy 100%)といった国際的なイニシアティブにも対応しており、自社の再エネ電力の使用実績として報告することが可能です。
J-クレジット
J-クレジットとは、再生可能エネルギーや省エネ設備の導入、さらに適切な森林管理を行うことで得られるCO2等の吸収量を「クレジット」として認証する制度で、国(環境省・経済産業省・農林水産省)が運営しています。Jクレジットを購入すれば、省エネ設備や発電設備を持たない方でも、温室効果ガスの排出削減に貢献できます。また、温対法の温室効果ガス排出量の報告や、RE100をはじめとした国際イニシアティブへの報告にJクレジットを利用することも可能です。
非化石証書との特徴や供給量の比較
それぞれを比較した表を次にまとめました。
運営 | 特徴 | 活用方法 | |
---|---|---|---|
非化石証書 | 資源エネルギー庁 | 環境価値を証書化したもの 一定の条件を満たせば需要家が直接購入することも可能 | CDP・RE100(FITトラッキング付き・運転開始から15年以内の電源のみ対象)・SBT等の国際イニシアティブの報告に活用 |
グリーン電力証書 | 民間団体 | グリーン電力(再エネ)自体ではない部分の環境負荷価値を証書の形で保有 誰でも購入することが可能 | CDP・RE100・SBT等の国際イニシアティブの報告に活用 |
Jクレジット | 政府 | ランニングコストの低減や、クリーンエネルギーの導入、省エネ投資に活用可能 誰でも購入することが可能 | CDP・SBT・RE100(再エネ電力由来であること) |
非化石証書のメリットと企業における活用方法
非化石証書のメリットと企業における有効な活用方法を解説します。
企業が非化石証書を購入する2つのメリット
企業が非化石証書を購入するメリットは、次の2つが挙げられます。 企業価値の向上 ESG投資に反映
企業価値の向上
地球温暖化への対策が急務である時代、企業の環境活動に対して消費者の目線はいよいよ厳しくなっています。企業の環境活動を視覚的にアピール可能な非化石証書の活用は、消費者への信頼感に結び付き、企業価値を向上させます。
ESG投資に反映
企業のビジネス方針として脱炭素を推進することは、当然の時代を迎えています。企業の指針にサステナビリティ方針を組み込まないことは、ESG投資家の信頼を落とし、企業の投融資に大きな影響を与えます。
非化石証書を活用することは、ESG投資家に自社の方針をアピールし、有効な投融資に結び付くメリットを生み出します。
環境に対する取り組みのアピールと報告書への活用
非化石証書は、次のような環境活動を推進する国際イニシアチブや、国内の制度における各種報告書に活用できます。環境に対する取り組みをアピールするのに有効です。
RE100
「RE100」とは、企業が100%再エネへの移行を目指す国際イニシアティブで、この目標を達成する手段として、トラッキング付き非化石証書の利用が認められています。(トラッキングについては次項に記載)
CDP
CDPとは、企業が事業活動における環境影響を公表することで温室効果ガス削減の推進を行う非営利団体です。2018年からは、CDPへの報告書に非化石証書を活用することが可能になり、非化石証書を購入することで、環境活動を推進している企業として社会に発信可能です。
TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)
企業にもたらす気候変動の「リスク」や「機会」の財務的影響を把握し、開示することを提言している国際機関です。TCFDの対応時に非化石証書を活用することにより、環境への取り組み姿勢をアピールすることができ、特に投資家や金融機関など資本市場での競争力を高めることができます。
SBTi
SBTiとは2015年のパリ協定をきっかけに設置された「科学的知見に基づいた目標」により、企業のGHG削減促進を主導するための国際的なイニシアチブです。非化石証書の活用により、SBTiのScope 2(電力消費に伴う間接排出)における排出量削減に算入し、目標達成に近付けることできます。
温対法
「地球温暖化対策の推進に関する法律」の略称で、温室効果ガスを一定以上排出する事業者(特定排出者)に対して、排出量の測定と報告を義務付けた法律です。非化石証書を活用することで、報告書において、CO2排出量を削減することができます。
非化石価値取引市場の仕組み(購入プロセスとトラッキング)
ここでは非化石証書を取引するための市場や購入プロセス、トラッキングについて解説していきます。
非化石価値取引市場とは
非化石価値取引市場とは、再生可能エネルギーや原子力など、非化石電源から発電された電気の「環境価値」を取引するための市場で、次の2つに分かれています。
- 再エネ価値を取引「再エネ価値取引市場」
2021年度創設された再エネ価値取引市場は、需要家の直接購入を可能としました。取引対象はFIT非化石証書であり、 小売電気事業者及び需要家が購入可能です。ただしRE100に活用する場合は全量トラッキング付きである必要があり、運転開始から15年以内の発電所由来の再エネ指定の非化石証書という条件を満たす必要があります( 2022年10 月改定の RE100 クライテリアに準拠の場合)。
- 高度化法義務の達成「高度化法義務達成市場」
「エネルギー供給構造高度化法(高度化法)」は2009年に制定された非化石エネルギー源の利用を促す法律で、年間の販売電力量が5億kWh以上の小売電気事業者に対し、非化石電源比率を2030年までに44%以上に引き上げることよう定めています。
出典:2019年5月31日資源エネルギー庁 エネルギー供給構造高度化法の中間目標の策定について
この目標達成を後押しする目的で、非FIT非化石証書を取引するために創設された市場です。小売電気事業者が購入可能ですが、一定の条件を満たしている場合は、需要家は発電事業者から非FIT証書を直接購入することもできます。 取引対象は「非FIT電源」(再エネ指定・再エネ指定なし)となり、 2022年度より再エネ指定の非FIT非化石証書においてもトラッキングが開始しています。
市場 | 証書の種類 | 由来する電源 | オークション形式 | 購入主体 |
---|---|---|---|---|
再エネ価値取引市場 | FIT証書 | FIT電源 | マルチプライスオークション | 小売電気事業者、需要家、 仲介事業者 |
高度化法義務達成市場 | 非FIT証書(再エネ指定) 非FIT証書(再エネ指定なし) |
大型水力、卒FIT電源、バイオマス | シングルプライスオークション | 小売電気事業者(一定条件を満たした場合に需要家が発電事業者から直接購入可能) |
非FIT証書(再エネ指定なし) | 原子力、ごみ発電(廃プラ) ※今後、水素等も導入を検討 |
出典:資源エネルギー庁「非化石価値取引について」(2023年)
「再エネ価値取引市場」での2023年オークション取引量は、2022年度の約2倍にあたり、約85億kWhとなりました。環境価値取引への関心の高まりは、今後ますます拡大していくでしょう。
非化石証書の3つの購入方法
- 再エネ価値取引市場で購入する
小売電気事業者、需要家が買い手として参加できます。マルチプライスオークションで取引されます。
- 高度化法義務達成市場で購入する
原子力由来の非FIT非化石証書を購入できます。買い手として参加できるのは小売電気事業者のみです。
- 相対取引で購入する
相対取引とは小売電気事業者と発電事業者が直接売買する取引です。市場取引と比べて、自由度の高い購入方法です。相互の合意する条件(取引価格など)で売買することができます。
需要家による購入方法
ここでは需要家による購入方法をご紹介します。
- 需要家自身が購入する
需要家自身の市場参加が可能となり、需要家は「再エネ価値取引市場」にて直接非化石証書(FIT証書)を購入することができます。また、発電者と需要家がバーチャルPPAを締結することで、発電事業者から非FIT非化石証書を直接購入することが可能です。バーチャルPPAとは、卸電力価格と契約した固定価格との差額決済により、再エネ価値を別途取引する方式です。
- 代理購入事業者を通じて購入する
小売電気事業者などの代理購入事業者を通じて購入する場合は、証書のみの購入が可能です。この場合、証書コスト以外に調達のための手数料がかかります。 株式会社FPSでは、非化石証書購入代行をしておりますので、お気軽にお問い合わせください。
非化石証書の購入タイミング
非化石証書を購入するタイミングについて、日本卸電力取引所(JEPX)の市場取引を利用する場合は入札時期に注意しましょう。毎年2月、5月、8月、11月に入札があるので、小売電気事業者などへ代理購入を依頼する場合は、事前に2か月前くらいから問い合わせを行いましょう。
非化石証書のトラッキングと透明性
従前の非化石証書は、これまで電源種や発電所所在地などの詳細を明確にしておらず、不透明な部分がありました。そのため、2019年より透明性確保のためのトラッキング(追跡)情報証明の実証実験が開始されました。
トラッキング付FIT非化石証書とは
トラッキング付FIT非化石証書は、発電された生産地や再エネ電源の種類などの情報が付与された証書です。非化石証書にそれらのトラッキング(追跡)した情報を付与することで、信頼性が向上します。
非化石証書が持つ持続可能なエネルギーへの効果と影響
国際情勢が複雑化する中、燃料価格の上昇により国際エネルギー市場の価格は高騰しています。エネルギーを取り巻く情勢は国内外で大きく変化しており、電気代の高騰はしばらく続くと予測されます。
一方、化石燃料に依存することのない再エネの価値は向上しており、取引は国内外で上昇傾向です。地球温暖化問題が深刻化するなか、世界の脱炭素推進は急務であり、環境価値のある証書の市場はますます拡大するでしょう。
非化石証書の持続可能性と経済的利点
非化石電源は、再エネや原子力発電などの化石燃料と比較すると温室効果ガスの排出量が少ないということが最大のメリットです。そのため証書購入者は使用・販売している電気の温室効果ガス排出量が少なく、持続可能なエネルギーを使用していることをアピールできます。
メリットにおいてもお伝えした通り、非化石証書の環境価値は企業のブランドイメージ向上にも役立つため、結果的に自社の利益に結びつきます。
再生可能エネルギーへのポジティブな効果と国民負担の軽減
非化石証書の売却益は、再エネの投資や運用に使用されるため、非化石証書の取引が拡大するほど、再エネ事業が推進されるという効果を生みだします。再エネ事業の拡大は、国民の再エネ賦課金の減額につながる可能性が高まります。
再エネ賦課金は、国内に再エネ市場を根付かせるための重要な資金ではありますが、同時に国民への負担となっているのも事実です。非化石証書の購入は、持続可能なエネルギーである再エネの拡大と、国民負担の軽減という2つのポジティブな結果をもたらします。
非化石証書の動向と課題
非化石証書の動向と課題について理解し、非化石証書のより有効な活用方法を検討しましょう。
再生可能エネルギー源への移行を促進する政策
政府は再エネ促進のために、これまで再エネで生産された電力を固定価格で買い取るFIT制度を進めてきました。さらに政府は投資インセンティブを確保しながら、電力市場のメカニズムを活用しつつ、再エネ電源の電力市場への統合を図るために、2022年4月にFIP制度を開始しました。FIP制度では、発電事業者の収入は、電力市場での売電価格等にプレミアムを加えたものが基本となるため、市場価格と連動します。
FIP制度における発電事業者収入は「市場売電収入」と「プレミアム収入」の大きく2つに分けられます。市場売電収入は(スポット価格 × 売電量)、 プレミアム収入は((基準価格-参考価格)×売電量) により計算され、発電事業者は収入を得ることができます。これに加え、FIP制度においては非化石証書が発電事業者に帰属するため、非化石証書による追加収入を得ることも可能です。そのためさらに非化石価値の取引が活発化することが予測され、非化石証書の取引は拡大していくでしょう。
取引と市場での課題と問題点
非化石証書で取引される非化石電源には原子力も含まれるため、注意が必要です。なぜなら原子力は再エネではないため、持続可能なエネルギーに該当しないと、ESG投資では原子力関連事業を除外する傾向があるからです。
また海外においては、企業の上辺だけの環境活動である「グリーンウォッシュ」に対する目が厳しさを増しています。そのため不透明な温室効果ガス削減事業に対しては、電源の情報開示を求める等の動きがあります。再エネ対応の電気料金を選ぶ際は、電源構成の内容をしっかりとチェックし、さらに透明性を確保することが重要です。
FPSの非化石証書関連サービス
地球温暖化を抑止するためには、温室効果ガスを大量に排出する化石燃料からの脱却を図らなくてはいけません。持続可能なエネルギーとして再生可能エネルギーの需要はますます増加し、再エネ市場は拡大していくでしょう。非化石証書による取引は、再生可能エネルギー市場を拡大する後押しとなります。
しかし、非化石証書の購入にはJEPXへの入会や専用口座の開設、入札に伴う事務手続きなど、手間がかかり、購入までに時間がかかってしまうことがあります。
FPSの非化石証書関連サービスを利用することで、これらの手間を省きながら、温対法やRE100など企業の再エネ目標や予算に合わせた最適な非化石証書の量を購入することが可能です。
FPSは、専任の営業担当者と高度な需給管理ノウハウを活かし、企業の再エネ導入をサポートします。さらに、柔軟な再エネメニューをご用意しており、上記サービスだけではなく、コーポレートPPAなどお客様のニーズに最適なオーダーメイドの再エネスキームをご提供します。
非化石証書の購入代行など再エネ導入に関するご相談は、ぜひFPSにお任せください。
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