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2025.12.09

JEPX(日本卸電力取引所)とは?電力市場の仕組みや取引価格の決定方法

JEPX(日本卸電力取引所)とは?電力市場の仕組みや取引価格の決定方法

JEPX(日本卸電力取引所)をご存知でしょうか。我が国で唯一の卸電力市場を開設・運営する取引所です。
安定した量と価格水準で、需要家に電気を届けるためには、多様な事業者が効率的に電力を全国で調達できるとともに、市場を的確に反映した価格で売り買いできるマーケットの存在が欠かせません。
自由で開かれた公正な電力取引の実現のために創設されたのがJEPXです。
今回は日本の電力市場を支えるJEPXの役割や機能について解説します。

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JEPX(日本卸電力取引所)とは

JEPX(日本卸電力取引所)とは、Japan Electric Power Exchangeの略称で、我が国唯一の卸電力取引市場を開設・運営する取引所です。
2003年11月に設立され、2005年4月から本格的に市場取引が始まりました。
電力自由化の進展により、多様な発電事業者や小売電気事業者が参入する中で、公平かつ透明性のある取引の場を提供することが求められ、JEPXが誕生しました。

従来、電力取引は大手電力会社の内部取引や相対契約に依存しており、新規参入者が不利な状況に置かれていました。JEPXはこうした状況を改善し、「電源の流動性を高め、市場競争を促進する」役割を担っています。
現在では、数百社にのぼる会員(発電事業者・小売電気事業者・一定の条件を満たす大口需要家など)が参加し、国内の電力市場の価格形成を担う重要な機能を果たしています。

JEPXと電力自由化

1990年代に起こったバブル経済の崩壊や円高の進行などの経済情勢の変化を受けて、電気料金の低減化が望まれ、1995年、発電部門の一部自由化を皮切りに電力自由化がはじまりました。
1999年の第2次制度改革では、特別高圧需要家(大規模工場など)を対象にした小売部門の部分自由化が決定し、翌年施行されました。

しかし、全販売電力量のほとんどを旧一般電気事業者が保有しており、部分自由化後も内部取引や相対取引が主体でした。本当の意味での小売部門の自由化に向けては、多様な事業者が平等に市場から電力を調達できる環境整備が欠かせず、その実現に向けて、2003年、JEPXが創設されます。

電力自由化の進展とともに、電力市場への参入者や取引形態が多様化し、JEPXも市場活性化に向けた取り組みを進めています。 イメージ イメージ 参考:一般社団法人日本卸電力取引所「取引活性化に向けた取組」(15ページ)

JEPXが設立された背景

日本の電力事業は、戦後、垂直一貫体制による地域独占が続いてきました。
しかし、1990年代に入ると、バブル経済の崩壊や円高の進行などの経済情勢を背景に、公正な競争原理のもとで、「低廉で安定的な電力供給」の実現が求められるようになっていきます。
1995年以降、段階的な自由化が行われてきましたが、事実上、独占という市場構造は残っていました。
実効的な自由競争市場の成立には、多種・多様な事業者が市場に参加し、広域的な競争が起こる必要があります。
しかし、発電設備の大半を大手電力会社が所有する状況下では、電力の取引は大手電力会社のグループ内取引や相対取引が主体であり、競争上の障害となっていました。
小売部門の競争促進に向けては、電源の流動性や多様な調達方法の確立が不可欠です。
さらに自社の発電部門と小売部門間の社内取引と、新電力など社外への卸取引を公平に取り扱う「内外無差別」の確立も欠かせませんでした。

発電部門、小売部門それぞれの事業単位で利益を追求することが、電力事業の本質といえます。
発電事業者ならば、他の発電事業者より効率的に発電して高く電力を売る。小売電気事業者ならば、他の小売電気事業者より効率的に電気を調達し、自社の工夫・強みを付加して顧客に届ける、といった活動です。
このように発電事業者間、小売電気事業者間の競争が活発になってこそ、電力事業全体での効率化が図られ、日本の電力事業はさらに発展していきます。
電力事業のさらなる発展に向け、安心できる取引環境を実現しようと、2003年、卸電力取引市場が創設され、2005年にスポット市場の取引が開始されたのでした。

電力自由化とJEPXの関係

2003年の第3次制度改革では、契約電力500kW以上の高圧需要家(中規模工場やオフィスビル等)も電力自由化の対象となりました。同年11月には、電力取引の透明化を目的として業界自主的に日本卸電力取引所(JEPX)が設立され、2005年4月からスポット市場取引を開始しました。

このように、2005年時点で、販売電力量の約6割が自由化対象となりました。
しかし、当時は発電設備の多くを大手電力会社が所有しており、市場に十分な電力が流通せず、取引の活性化は進みませんでした。
市場に厚みがなければ、全国規模での電力調達は叶わず、新規参入者も限定的にとどまります。競争が阻害されれば、電気料金の抑制や需要家の選択肢の拡大といった電力制度改革の目的を果たすことができません。

2008年の第4次制度改革では市場制度が見直され、新たに時間前市場が創設されます。

2013年には、大手電力会社がスポット市場に対して、余剰電力の全量を限界費用(燃料費など)ベースでスポット市場に供出する自主的な取り組みがはじまります。

制度改革および余剰電力の供出によって、スポット市場を通じた電力の取引量は少しずつ増えはじめます。

流動性が増えたとはいえ、2016年時点での取引量は、全国の電力需要の約2%にとどまっており、さらなる活性化が求められる中、2016年4月から小売部門の完全自由化がはじまります。
一般家庭を含むすべての需要家が電力会社や料金メニューを自由に選択できるようになったことを受け、JEPXもスポット市場の取引時間の拡大など、市場機能の向上などを実施しました。

JEPXでの取引の種類

JEPXおよび関連機関では、電力の安定供給と市場の活性化を目的に、さまざまな取引市場が設けられています。代表的なものは以下の5つです。

  • スポット市場
    翌日に受け渡しを行う電力を対象とした市場で、取引量が最も大きい市場です。
    発電事業者は余剰電力を販売し、小売電気事業者は不足分を調達する場として利用します。需給計画の最終調整を行う基本市場といえます。
  • 時間前市場
    当日の需要変動や発電トラブルに対応するための市場です。
    たとえば、急な気温変化で需要が急増した場合や、発電所の突発的な停止時に利用され、需給バランスを維持する「安全弁」の役割を果たします。
  • 先渡市場
    1年間・1か月・1週間といった将来の一定期間に受け渡す電力を対象とする市場です。
    電力会社や需要家は価格をあらかじめ固定できるため、価格変動リスクの回避や予算策定の安定化に役立ちます。
  • 間接送電権市場
    北海道⇔本州、九州⇔本州などエリア間を結ぶ連系線の利用権を取引する市場で、制度運営はOCCTO(広域的運営推進機関)、取引はJEPXが担っています。
    送電容量が限られているため、オークション形式で取引され、電力を他地域へ融通する際に必要となります。
  • 非化石価値取引市場
    再生可能エネルギー(太陽光・風力・水力など)や原子力といった「非化石電源」による発電の環境価値を証書化して取引する市場です。この市場では、FIT・FIP制度の対象電源や非FIT(自主電源)による非化石電源から生じた環境価値が取引されます。
    小売電気事業者はこの証書を購入することで、再エネ比率の向上やCO₂排出係数の低減といった目標を達成できます。
    実質再エネ100%プランやRE100対応メニューの根拠としても活用され、脱炭素社会の実現に向けて重要な役割を担っています

本記事では、取引量が最も大きい「スポット市場」に焦点を充てて説明します。
なお、非化石価値取引市場についてより詳しい内容はこちらをご覧ください。

スポット市場とは

卸電力市場の中で、取引量が最も大きい市場が「スポット市場」です。
電力は安価に貯蔵することができず、供給と需要を常に一致させなければならないという「同時同量の原則」があります。これが崩れると停電などにつながる恐れがあるためです。

同時同量の原則は、発電量と需要量が常に一致するよう調節する考え方であり、発電事業者が提出する発電量の計画と、小売電気事業者が提出する需要量の計画を基に一般送配電事業者が需給バランスを保つことで成り立っています。

発電・需要計画の提出は長期計画から徐々にその粒度が細かくなり、現在は、1日前に翌日の30分ごとの発電計画と需要計画をそれぞれ確定させています。
スポット市場は、翌日の需給計画を確定させるための中核的な取引市場です。

発電事業者は、自社が保有・契約する発電所の発電量を計画し、すでに売り先が決まっている販売量を確認して、スポット市場への入札を考えます。このとき、自社の発電可変費用(燃料費など)を上回っていれば電気を市場に売り、下回っていれば買うことを、と想定されています。
一方、小売電気事業者は、顧客の需要を予測し、その需要予測を積み上げて、調達しなければならない量を考えます。そのとき、不足分があればスポット市場から調達しなければならないため、買い入札をいれます。
こうした発電事業者と小売電気事業者の入札すべてをまとめて、つきあわせを行い、価格と量でバランスをとります。
これがスポット市場の機能です。

スポット市場の取引の仕組み

スポット市場では、1日(24時間)を30分単位で48コマの時間帯に分割し、それぞれの時間帯で取引を行っています。
売り手は1コマごとに売りたい電力量と価格を提示します。買い手は1コマごとに買いたい電力量と価格を提示します。提示された入札を元に、需要と供給の交点でスポット価格が決定し、 売り手と買い手の提示した価格から、そのコマの取引が成立し電力価格が決まります。

スポット市場の取引は、取引システムを通じて下記の情報を入力することで行われています。
入札エリア 入札内容
入札エリアとは、売り手にとっては「どのエリアで発電した電気を売るのか」「どのエリアで使用する電気を買うのか」といった情報を入力します。
入札内容とは、商品ごとに売り手は「◯円以上〜◎円未満なら□kWを売る」、買い手は「◯円以下なら△kW買う」など、価格と量の組み合わせ情報を入力します。
入札価格は1kWh相当の電力量あたりの価格とし、0.01円(銭単位)単位で行います
入札は、毎日10時に締め切られ、翌日分の取引計算が行われます。

スポット市場は、ブラインド・シングルプライスオークション方式で約定価格や約定量が決定されています。
ブラインド・シングルプライスオークションとは下記のような約定方法です。

  • 他の参加者の入札動向が開示されない状態(ブラインド)で入札
  • 取引所は締め切り後にすべての入札を売買にわけ合成し、売りカーブと買いカーブの交点で約定価格・約定量を決定する
  • 入札者は入札した価格によらず、決定された約定価格で売買するシングルプライス方式で購入する

シングルプライス方式によって、約定価格よりも低い価格で入札した売り札は、約定価格で売ることができます。約定価格よりも高い価格で入札した買い札は、約定価格で買える仕組みになっています。

JEPXのスポット市場価格の動向

スポット市場の約定価格は、需要と供給のバランスで決まります。そのため需給バランスが崩れると、スポット市場価格も急激に変動してしまいます。
価格変動の主な要因は、次の4つです。 燃料価格の高騰 LNGなど燃料の在庫不足 故障や災害による大規模発電所の運転停止および出力低下 酷暑や厳冬による急激な電力需要の増加
LNGなどの燃料価格の高騰は発電コストを上昇させることから、スポット市場への売り札を高騰させます。
また、季節外れの気温の低下や上昇は、想定外の電力需要の急増をもたらすことから、LNG消費が急激に進み、LNG在庫が不足する事態となります。その結果、大規模火力発電所が運転停止に追い込まれ、スポット市場の価格が高騰する事象も起こっています。
このほかの要因として、近年、注視されているのが再生可能エネルギー(再エネ)による再エネ発電量の変化です。

2021年、2022年のスポット市場価格の高騰

スポット市場の価格は、小売部門の全面自由化後は、年間平均10円/kWh程度で推移していました。
ところが2021年1月、の寒波およびLNG不足をきっかけに電力需給がひっ迫し、過去最高値となる251円/kWhまで跳ね上がりました。
2022年2月には、ロシアによるウクライナ侵攻を受け、LNG需給がひっ迫。スポット市場の価格高騰に拍車をかけました。
さらに2022年3月、震度6を観測した福島沖地震の影響で、火力発電所の一部が緊急停止します。これに季節はずれの寒波が重なり、電力需要消費量が急増。東京電力管内と東北電力管内にはじめて「電力需給ひっ迫警報」が出され、スポット市場価格は大きく変動しました。

スポット市場価格は、2023年1月以降、燃料価格の低下に伴い、低下傾向にありますが、近年、大きな変動が生じています。スポット市場の価格推移は下記のとおりです。

再生可能エネルギーによるスポット市場価格への影響

再エネ電力はスポット市場価格にどのような影響を与えているのでしょうか。
再エネ電力は、太陽光や水力、風力などが代表されるように自然にあるものを燃料とするため、発電時の燃料費を抑えることができます。
実際に、太陽光が多い日の昼間は太陽光発電量が多くなり、スポット市場の約定価格が0.01円/kWhになるなど、太陽光発電や風力発電など再エネ電力の出力変動が、スポット市場価格に影響を与えています。

スポット市場は電力需要が供給を上回ると価格が上昇し、供給が需要を上回ると価格が低下する仕組みです。
太陽光発電や風力発電が急速に普及した結果、電力需要が落ち着く春や秋などの晴れた日中は、需要を上回るほどの再エネ電力が生み出され、その結果、電力余剰が発生しています。
電力余剰は全国規模で起きており、こうした余剰が0.01円/kWhの価格を発生させる原因となっています。

実際、太陽光発電や風力発電の出力変動が、スポット市場価格に影響を与えはじめており、2020年代に入り、スポット市場価格は最低入札価格である「0.01円/kWh」となる時間帯が増えています。

0.01円/kWhがついた時間帯の年間比率は次のとおりです。
2018年度:0%
2019年度:0.1%
2020年度:1.5%
2021年度:1.6%
2022年度:3.3%
2023年度:4.7%
2024年度:2.4%


0.01円をつける時間帯は1年を通してまだ数%台ですが、すでに再エネの発電を強制的に止める「出力抑制」が増えはじめています。特に太陽光発電の普及が進んだ九州エリアでの出力制御は2025年度の出力制御率が.1%となる見通しと発表しました。(参考:九州電力送配電株式会社「2025年度出力制御見通しについて」) 出力制御が増加し続ければ、再エネ拡大への投資意欲がそがれる可能性があります。

また0.01円/kWhの価格発生が増え続けると、火力発電の収益性を悪化させ、発電所の保守・点検やリプレースを滞らせる恐れがあります。こうした事態が常態化すると、酷暑や厳冬、災害といった需給ひっ迫時に火力発電を稼働させることができず、電力危機を招く可能性があります。

国は、出力制御の抑制および0.01円/kWhといった低価格での取引減少に向け、余剰電力を電力消費が大きい地域に送れるよう、送配電網の増強などを進めています。
さらに中長期的な検討課題として、電力市場への「マイナス価格(ネガティブプライス)」導入などをあげています。

FPSの電力市場分析

現在の電力市場では、JEPXの市場価格の変動が電気料金に大きく影響します。
特に、電気料金の予算策定には正確な市場分析が必要となります。過去と現在の市場動向や、将来の燃料価格の変動を見越し、市場価格の変動をシミュレーションする能力が不可欠です。

このように近年、市場を分析し将来の電気料金の変動を予測する能力が電力会社に必要な能力となってきています。
電力小売部門の自由化により、たくさんの電力会社がある中で、FPSはその「市場分析力」を強みとしています。

FPSでは、①試算時点の実勢相場を反映したシミュレーションと、②将来的な相場変動を織り込んだシミュレーションの2つのパターンをご用意しており、多様なケースに対応した予算策定を可能にしています。

さらに、金融業界のトレーディングや多業種でのデータサイエンスに精通したメンバーが、電力政策の変更にも柔軟に対応しながら、電力取引の精度向上に日々取り組んでいます。

このような取り組みにより、精度の高い電気料金の変動シミュレーションが可能となり、お客様の電気代予算の策定にお役立ていただけます。

FPSでは、この高精度なシミュレーションを基に、電気料金の変動リスク軽減を強力にサポートいたします。また、専任の営業担当がつき、貴社の状況に合わせた最適な予算策定をご支援いたします。

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